2006年05月20日

analysis #17 米国の新提案と北朝鮮核問題の岐路

・米国は北朝鮮に対する金融制裁の効果に自信を深めている。
・北朝鮮の最大の目的は金正日と上層部の現在の生活の維持であり、そのためには核を手放すことはできない。

このような状況下において、様々な動きが始まった。

・米国がリビアとの国交回復・テロ支援国家の解除
・米国による北朝鮮に対する懐柔的な平和条約締結案の浮上
・テポドン2号の発射準備報道
・日本政府の国民投票法案提出と民団・総連の和解

▽米国の新提案


U.S. Said to Weigh a New Approach on North Korea
ttp://www.nytimes.com/2006/05/18/world/asia/18korea.html?_r=1&oref=slogin

米、北朝鮮との平和条約交渉を検討か・米紙報道
ttp://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060518AT2M1801518052006.html

あわせて、ルーガー上院議員が提出した「北朝鮮関係法案」について

北朝鮮関係法案の要旨 
ttp://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2006051901004874_Detail.html
 【ワシントン19日共同】「北朝鮮関係法」案の要旨は次の通り。
 一、この法を履行するため米国は平壌に連絡事務所を開設する。北朝鮮はワシントンに連絡事務所を設置できる。
 一、米国は韓国、日本、ロシア、中国とともに北朝鮮への安全の保証の供与へ向け協力する。プルトニウム核計画の申告、除去のプロセス履行、核実験停止、不拡散が前提となる。
 一、あらゆる大量破壊兵器、関連物質や製造施設、運搬手段の検証可能かつ後戻りしない完全廃棄達成を目指す。
 一、それは(1)プルトニウムや製造施設の申告や除去(2)5000キロワットの実験用黒鉛減速炉の停止(3)再処理施設の停止(4)研究炉の国際原子力機関(IAEA)による管理−を含む平和的な核、関連物質、製造施設の凍結、解体、除去となる。
 一、これを受け、米国は北朝鮮と関係を正常化する。非核エネルギー提供に反対せず、学校や病院などへの人道エネルギー支援を行う。
 一、高濃縮ウランの申告、除去。ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)に抵触する運搬手段や生物、化学兵器の廃棄。
 一、これを受け、米国は世界銀行などに対し、金融サービスや支援内容に関して北朝鮮への啓発活動を行うよう促す。
 一、さらに地域の脅威となる先進通常兵器問題が解消すれば、米国は北朝鮮をテロ支援国家指定から解除。一定の条件を満たせば、米財務長官は国際通貨基金(IMF)などの米代表に対し、北朝鮮への財政支援の働き掛けを行うよう指導する。
 一、北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)に復帰し、追加議定書を締結、化学兵器禁止条約なども批准。MTCRに加盟。
 一、6カ国協議参加国は「国際科学技術センター」を設置、大量破壊兵器活動に従事した北朝鮮科学者を支援する。
 一、当該国が満足する形で拉致問題が解決されれば、米国は北朝鮮と平和条約の対話に入る。
(初版:5月19日19時15分)


米国内においても様々な形の北朝鮮へのアプローチが浮上している模様。
普通に考えるならば、リビアとの国交正常化を受けての平和条約案ということになるだろう。
この平和条約交渉の参加国は、米朝に加えて中韓という、米国としてはほとんど何のアドバンテージのないメンバーとなっており、日本とロシアが脱落している。



analysis #16 PSIが揺るがす日本の集団的自衛権と国連安全保障理事会
http://blue-diver.seesaa.net/article/17457898.html
日、米、英、伊、蘭、豪、仏、独、スペイン、ポーランド、ポルトガル、シンガポール、カナダ、ノルウェー、ロシアの15 カ国をはじめとする60 カ国以上が、PSIの活動の基本原則を定めた「阻止原則宣言」を支持し、実質的にPSIの活動に参加・協力している。
これら15 カ国は、PSI発足後の一定期間、「コア・グループ」としてPSIの発展に中心的な役割を果たした。

この中にロシアは入っているが、中国と韓国は入っていない。


2006年5月8日
米国の新たなPSI始動

この2006年5月8日を持って、極東情勢は新たな段階に移行しており、米国の提案した新たな平和条約の締結にPSIコア・グループであるロシアと日本が加わっていない、ということは重要な点であるように思う。

ロシアについてもう一点。


「拉致」「人権」に消極姿勢 サミット議長国ロシア
2006年05月17日10時46分
ttp://www.asahi.com/international/update/0517/002.html

サミットで拉致問題が取り上げられることは、不透明になってきた。
ロシアのいうように、人権問題を取り上げる場としてサミットが不適格ならば、ふさわしい場所、つまり国連という場で取り上げる選択肢が有力となる。

米国との対立が目立ってきたロシアが、北朝鮮問題に関して米国にどのような回答をするのか注目される。

この北朝鮮に対する平和的アプローチについては、2005年10月にハマコー氏が注目すべき発言を行っている。


TVタックル 2005/10/10
http://blue-diver.seesaa.net/article/8171825.html

ハマコー氏
「6ヶ国の間でですよ
 核放棄をさせるということは
 私は決定だと思いますよこれは
 これもし飲まない場合はですよ
 みんなが好んでいるように攻撃になると思いますよこれ
(中略)
 核問題が解決されることが何故不安なんですか
 拉致の問題と核の問題と同一視するんですか
 核の問題と拉致の問題が一体化しなければ外交は進まないっつうんですか
 拉致の問題は拉致の問題で日朝協議でやればいい
 6ヶ国協議で一番問題なのは核の問題をどう処理するかっつうことなんだこれは

<拉致の問題が解決しなくても軽水炉について日本は援助しようと・・・

 日本はだから反対すればいいじゃないか じゃあ
 あんた方は反対するなら反対すればいい
 だから小泉と安倍の間に 溝が ね、 隙間風が吹いてきてるんだから」


核問題を平和的に解決させるためにこのような融和的なアプローチはありうるとは思うのだけれど、今回のNYTが報道した案もあくまで6ヵ国協議復帰を前提としたものであって、北朝鮮が6ヵ国協議復帰のための条件としている金融制裁解除は、そこまで米国が北朝鮮へ譲歩する理由が見当たらない。


「対イラン資源開発協力は正常」中国外務省が強調
ttp://www.sankei.co.jp/news/060518/kok139.htm
イラン核問題 ウラン濃縮原料は中国製か
ttp://www.sankei.co.jp/news/060519/kok041.htm

イランの外交的決着の雲行きも、また不透明感を増してきた。
中国としては、共和党ブッシュ政権における外交的失敗を演出することで、米国の民主党政権の確立を助け、対中圧力を軽減することも可能だろう。
そのためにイラン・北朝鮮問題の解決に積極的に動かないことのほうが、中国共産党にとって合理的と思える。

米国内においては、これに拒否感を示す共和党右派を中心とした保守層の突き上げが起きると考えられ、この世論を背にブッシュ大統領は原点に回帰する戦略を取る可能性がある。昨日のNJのINSIDE AMERICAを参考にすれば、レガシーへのこだわりを捨てるか否かが重要ということになるだろう。


▽5月は外交的タイムリミット

元国務省北朝鮮担当官 ケネス・キノネス氏
「大統領はこれまで強硬派と穏健派を
 行き来していましたが
 今 大統領は強硬路線に
 傾いているようです」

Q政権内で対立――?

「まさにその通りです
 強硬派は『米国はほとんど何も得て
 いないのに北朝鮮には与えすぎだ』と
 共同声明を批判し大統領に強硬路線を
 とるよう強く要求しています」

Qライス国務長官の姿勢は?

元国務省北朝鮮担当官 ケネス・キノネス氏
「ライス長官も基本的には強硬な政策と
 柔軟な外交政策の間を行き来する
 ブッシュ大統領の『シフト戦略』に
 従っています
 ライス長官の姿勢は 単に
 外交というだけではないんです」
(from FNN News JAPAN 2005/12/06 PERISCOPE:力学変化でシフト始まる!?)

元国務省 北朝鮮担当官
ケネス・キノネス氏
「強硬派の意見は一致していて、北朝鮮が外交的な解決を行わなければ、アメリカ政府はほかの選択肢を採るべきだ。例えば経済的な圧力を強化するとか、あるいは期限を夏までとして軍事行動を起こすといった強い姿勢を示しているのです」
「10月以来、明らかな戦略の変化が見えます。控えめな外交努力から、厳しい態度へとね。
 ライス長官が北朝鮮に対し、最近厳しい口調で話している一つの大きな理由は、強硬派に主導権を握られたくないからなんです。ライス長官も『妥協しているんだ、私は厳しい態度で臨む。その代わりもっと外交で解決する時間をくれ』とね。
 アメリカはイランに対して厳しい姿勢をとっています。そのメッセージははっきりと北朝鮮に伝わっていると思いますよ。次は北朝鮮だとね。外交的猶予はこの先2ヶ月から3ヶ月ぐらいでしょう。ブッシュ政権の忍耐の限界は、せいぜい春まででしょうね。それを過ぎると、北東アジアにおいて緊張が以前より増大することになると思いますよ」
(from FNN News JAPAN 2006/02/09 INSIDE AMERICA特別編)

5月も後半に入って浮上してきたこれらの動き。

テポドン2号の発射実験報道については、与党が国民投票法案の強行突破に成功すれば、朝鮮総連関連施設への課税減免措置取り消しに動くと考えられる。
普通に考えれば、これに対してのけん制とも思える。

共謀罪については、未だ情報が錯綜しているものの、小泉総理は共謀罪を19日朝に諦めた可能性がある。


共謀罪法案、成立は困難 議長仲裁、背後に首相の指示
2006年05月20日08時29分
ttp://www.asahi.com/politics/update/0520/001.html

朝鮮総連・民団に対しては、「破防法」が残っている。

安倍官房長官 16日
「朝鮮総連は公安調査庁が公安維持の観点から関心を有している。政府としてもその動向を十分注視したい」

破壊活動防止法
第三章 破壊的団体の規制の手続
(処分の請求)
第十一条  第五条第一項及び第七条の処分は、公安調査庁長官の請求があつた場合にのみ行う。

この破防法が適用されれば、北朝鮮は核・ミサイル実験などの手段に踏み切る恐れがある。

・今回、ミサイル発射に踏み切った場合、「昨年9月の第4回6カ国協議でまとめられ、北朝鮮も調印した共同声明の精神に相反することになる」と牽制。
・ライス米国務長官によって推進されたこの案の草案はフィリップ・ジェリコ国務省諮問官が作成。

(ttp://www.sankei.co.jp/news/060520/kok047.htm
 ttp://japanese.joins.com/article/article.php?aid=75879&servcode=500§code=500)

・北朝鮮への締め付けを主導しているのは、ヒル国務次官補と同じ国務省の対北強硬派・ジョセフ国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)である。

国務省が主導しているらしいこの平和条約交渉案。
私は、米国は「シフト戦略」に基づき、レガシー追求型の政策から力強いリーダーシップ型の政策へと転換しているとみている。
米国の読みは2005年9月20日の動きから、「北朝鮮の完全核放棄は不可能」と考えられ、今回のミサイル発射実験報道に対して、国務省報道官による第4回6ヵ国協議共同文書に基づく警告が行われた。
中間選挙を控える米国。
共和党右派の支持を引き戻すために、ブッシュ大統領がライス国務長官とともに力強いリーダーシップ型の政策へと回帰を固めたとするならば、ライス国務長官が「強硬派」へと変貌を遂げている可能性が高い。
したがって、金融制裁で締め上げられた北朝鮮が、6ヵ国協議に復帰することは困難と見越した上で「強硬派にシフトした国務省」が平和条約案を提出した、と考える。

平和的決着を目指したポーズである、とするならば、これは、最後通告へと繋がる動きなのか。

国際組織犯罪防止条約:2000年に国連総会で採択され日本も署名。テロなどの国際犯罪防止のため、「共謀罪」などの創設を求めている。

民団と総連が和解。
それに対して、小泉総理が共謀罪を捨てたとすると、日本は間接的な「テロ支援国家」となってしまう。
日本国内の団体から北朝鮮への送金を止めるために残された手段・破防法。
破防法適用時に発生する可能性のある北朝鮮の核・ミサイル実験。

米国は核の完全放棄なしに北朝鮮との平和条約を締結するならば、日本に核を配備させるしかない。
イージスと違い、これは日本が受け入れるのにはかなりの混乱を呼ぶ。
拉致問題・巨額の在日米軍移転費要求などを考えると、米国の日本における影響力が大幅に低下する恐れがある。

今回のテポドン2号はロフテッド軌道を利用した日本攻撃も考えられる兵器である。

かなり大胆に予測すると、

・共謀罪の代わりとして、民団・総連に対する破防法適用が日米首脳間で決定。
・北朝鮮のミサイル実験が現実となる前にテポドン発射実験兆候をリークし、日本国内の世論を形成。
・弾道ミサイル迎撃艦「シャイロー」の配備を待って、PSIによる海上封鎖に加えて朝鮮総連に破防法適用。
・ミサイル発射が行われた場合、イージスにより迎撃を試み、並行してミサイル基地攻撃を視野に入れる。


▽聖域の向こう側


総裁選前に支持表明 首相が経済界幹部に
ttp://www.kahoku.co.jp/news/2006/05/2006051701006470.htm
 小泉純一郎首相は17日夜、都内で奥田碩日本経団連会長ら経済界幹部と会食し、9月の自民党総裁選に関連し「今は国会に全力を挙げるが、8月末か9月になれば誰を支援するか態度をはっきりさせる」と述べ、総裁選前に支持候補を明らかにする意向を表明した。
 また、後継首相について「わたしの改革を引き継いでもらわないといけない」と、小泉改革の継承者がふさわしいとの認識を強調した。
 首相の靖国神社参拝の中止を求める提言をまとめた経済同友会の北城恪太郎代表幹事が「(提言で)ご迷惑をお掛けしました」と述べたのに対し、首相は「誰が言おうと関係ない」と靖国参拝を継続する意向を示唆した。 会食には西室泰三東京証券取引所社長、御手洗冨士夫キヤノン社長らも出席。首相は「(財界とは)最後の晩さん会だ」と語ったという。
2006年05月17日水曜日

この国の最後の聖域へと至る道。
戦後日本の異端者・小泉総理。

内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。

日本国憲法が内閣総理大臣に背負わせる罪。


 これらのことを話したのは、あなたがたが私によって平和を得るためである。あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。私は既に世に勝っている。
――ヨハネによる福音書 最後の晩餐 Last Supper
posted by     at 18:00| Comment(0) | TrackBack(2) | analysis | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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